From:新井翔平
朝の8:30。
僕は初めての土地、福澤諭吉の慶應義塾大学。
そのお膝元、三田駅。
ここから歩いて10分の地にある聖地で、列に並んでいた。
ラーメン二郎三田本店。
知り合いからの強烈なプッシュに押されて、というか、狂気に満ちた眼差しで「食べた方がいい」と言われた。
その眼差しと声に感じたものは恐怖ではなく、なぜここまで人の心を掴み、動かすのか。
マーケターである以上、これは体験しなくちゃいけない。
ちなみに、
僕らビジネスマン、全てのセールスマンやマーケターは、
「君の名は。」をきちんと劇場に観に行ったり、
ポケモンGOを実際にやってみたり、
トランプが勝った理由を自分なりに分析して、
大きな、社会がどんな「感情」を持ってそれを「支持」しているのかを、
肌で感じて言葉にしておくことはとても大事なこと。
(昌子さんの記事は面白いからオススメ。最近はだいぶ牙を抜かれた獅子だけど。。。)
大きな鍋をイメージして欲しい。豚が一頭入りそうな。
カウンターの中にはそんな鍋が2つある。
調理器具らしい調理器具はそれぐらい。
(地獄かココは?汗)
中は全面カウンターでいびつな『コ』の字に朝から大の大人の男たちが肩を「圧迫し」あっている。
行儀よく10名くらい綺麗に並んで、カウンターの中の教祖、
じゃなかった、
山田総帥(ラーメン二郎創始者であり、三田本店の店主)の作るラーメンをおとなしく待っている。
2つの鍋は、麺と豚骨スープ。
作り方は凄まじい。
麺を小分けに茹でるあのザルがない。
山田総帥が麺を「掴んで」、いや、「掴む」じゃない、グワシッとまるで赤ん坊のように麺を「抱えて」、一気に鍋に向かってぶん投げる。
しぶきがカウンターに飛ぶ。
人によっては顔にかかる人もいるかも知れない。
でも、
誰も何も言わない。
いや、むしろ彼らは山田総帥が親しげに話しかけると、、、、
嬉しそうにニヤニヤ答えてやがるッッ
く、狂ってやがる。。。
小学生の子供たちが一斉に手を上げて、「当ててもらえた」時の表情よろしく、
エサに群がる池の鯉よろしく、
せんべいに群がる奈良公園の鹿よろしく。
大の大人がニヤついている。。。
山田総帥、、、
恐ろしい子ッ。
そして作り方は、職人っぽさは正直みられない。
なんせでっかい鍋に麺を大量にぶち込んで、でっかい箸でかき混ぜて、総帥が頃合いかな~と思ったタイミングで茹で上げて丼に移す。
総帥の左手にはまさに「山」としか言いようがない、もやしとチャーシューがある。
それもまた左手でグワシッ!
グワシッ!!
って掴んで丼の上に乗せる。
最後もう一つの比較的小さな「山」はすりおろしニンニク。
これを一掴みしてもやしに勢いよくビチャッ!!
ビチャッッ!!!!
って投げつける。
多分すりおろしニンニクも、信、、、じゃなかった、お客さんの方に飛んでいく。
それでも彼らは何も言わない。
総帥から飛んできた聖なる調味料を拒絶する者などココにはいないのだ。。。
人は人から買いたい。
これはスモールビジネスオーナーにとって本当に朗報だ。
はっきり断言する。
ラーメンの味はそこまでうまいわけじゃない。
(↑お、俺、刺されるかな?大丈夫??)
しかし、全ての二郎系のれん分け店舗にも共通する鉄則にあるように、「二郎で修行した者が営業時間中はカウンターに立つ」という、厳しい戒律をこの系列店は守っている。
それは山田総帥ももとより率先して実践している。
カウンター越しに、気さくに信者たちに話しかける。
気遣う。
彼らの喜びを共に喜ぶ。
とはいえ、麺を茹でるタイマーも何も無い。
天気や総帥の調子次第では味はバラバラだろう。
それでも、、、
人は人から買いたい。
みんな総帥のラーメンが食いたいんだ。
二郎三田本店を支えてきたのは慶応の若い、食べ盛りの学生たちだ。
時に総帥はその学生たちのよき相談相手となり、兄となり親父となり、人生の師となり、その時に育んだ感情的なつながりは彼らが社会に出ても決して廃れることは無い。
これは顧客だけの話じゃない。
ラーメン二郎の系列店。
二郎系。
彼らは、「おいしいラーメン」が作りたいんじゃない。
(いや、詳しく聞いてないから分からんが、、、)
「二郎」が作りたいんだ。
自分の生まれ育ったふるさとで、二郎を作りたいんだ。
郷に返って、家族に自慢したいんだ。
「これが俺のもう一人のオヤジなんだ!」って自慢したいんだ。
「すげえだろオヤジは!」って自慢したいんだ。
そんな二郎を一瞬で潰す方法がある。
効率化だ。
機械を入れて、味にバラツキが出ないようにパッケージを工場で作り、茹で上げマシーンを入れてタイマーが鳴るキッチンにすることだ。
効率化を施すと、それはもう見るも無残に秒速で赤字に転落するだろう。
信者たちの心の傷は深く、癒えることはなく、もう二度とラーメンが喰えない身体になってしまうだろう。
ここまで二郎が信者に対して「粘着性」を発揮していたのは、
山田総帥の人柄であり、
人間らしさであり、
不完全さだったのだ。
効率化はその全てを破壊する。
でも総帥も人間だ。いつまでもカウンターに立ってられるのか?
これは企業としてのミッションやビジョンにも関わってくるから簡単なことは言えない。
僕みたいなコンサルタントが入り込んで改造して瞬く間にその会社を悪くしてしまうケースもある。
その顧客たちと店主との感情的な繋がりに「共感」と「尊敬」を持って接しなかったコンサルタントは一瞬でその会社を悪くする。
しかし、それでも「二郎」が家業として総帥の時代をもって終わりを告げるのか、
「二郎」を事業として永続性を持たせるのか、
そう遠く無い将来に決断を迫られることになるのだろう。
もし、
僕が僭越ながら総帥に何か一つ提案をすることが出来るなら、、、
「総帥、ニュースレターを書きませんか?」
これがコピーの偉大なる力だ。
「 セールスマンシップインプリント(印刷された営業マン) 」
難しいことはやらなくていい。
LINEもフェイスブックもインスタグラムもやらなくていい。
手書きでニュースレターを書いて、印刷して、
「今、三田本店には俺が育ててきた○○ってヤツがカウンターに立ってる。」
「正直まだまだかも知んねえ。」
「でもよ、俺はお前らみたいな、二郎の味をこよなく愛してくれるありがてえ奴らによ」
「お前らのガキのガキの世代にもよ」
「これからもずっと二郎の味を届けるために」
「本当に大事なことに着手するって決めたんだ」
「人を育てる」
「それには俺の力だけじゃ足んねえ」
「すまねえがお前らの力も貸してくんねえか?」
「11月1日から11月15日まで、○○を三田に立たせる」
「お前らの厳しい目と舌で、指導してやってくれ」
「追伸 、、、 俺もたまに顔を出すからよ。そんときゃ俺が作るよ」
みたいな。
あくまでこれは僕の一案であり、正解かどうかは分からない。
このまま何もしなくても二郎の魂を継ぐ人たちが、連綿とその味とスタイルを守っていくかも知れない。
なんせ、何が言いたかったかというと、
どれだけITが進もうが、
VRが進もうが、
AIが進歩しようが、
六星占術だろうと大殺界だろうと、
僕が木星人で君が火星人だろうと、
やっぱり、、、
人は人から買いたい。
あなたの人柄、パーソナリティをふんだんに表現し続けよう。
新井
P.S.
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